日本から始まり、世界に広がっている「コスプレ」文化は、ここダバオ市でも根付いている。ダバオでコスプレを製作し、フィリピン全国に販売している女性のこれまでのストーリーを聞くと、私は「天職とはこのようなものを言うのだ」と思った。
南フィリピン大学で科学を専攻するJonavil Magbanua氏は、自分の情熱のひとつがコスプレのデザインをとおした芸術活動だと分かったという。Jonavil氏がコスプレを始めたのは高校生の頃だった。さまざまなコスプレのイベントに参加し、そこでスキルや創造力を養ってきた。そのひとつが「ミンダナオコスプレサミット」だった。ダバオ市だけでなくミンダナオ各地に存在するコスプレイヤーが招待され、コスプレにスポットライトを当て、後輩のコスプレイヤーやイベント参加者の心を動かすというのが目的であった。
その後19歳になったJonavil氏は、さまざまなコスプレ衣装を製作・販売するオンラインショップを開始する。ターゲットはダバオ市だけでなく、フィリピン中のコスプレ愛好者だ。最初は衣装を作るのに時間がかかりすぎ、嫌になったこともあったが、1着作り上げたことで自信になったという。その後、友人の後押しもあり、オンラインショップを立ち上げることになったという。
開業してから数か月が経ち、このオンラインショップはダバオ市外からも注目を浴びるようになる。この3年間、Jonavil氏とその友人は、さまざまなキャラクターのコスプレ衣装をたくさん作ってきた。中でも一番人気は、ゲームアプリ原神のキャラ「ルミネ」だという。
ここまで事業は成功したが、Jonavil氏は、お金を稼ぐつもりはなかったと語っている。「作るという行為が、自分の好きなことだからです。私の作った衣装で満足しているのを見ると、嬉しさでいっぱいになります。本当に思いもよらないことでした。とても充実しています」と語るJonavil氏の言葉には、「天職」が何なのかを物語っているように感じる。