【コラム】セジマかな…サウシマかな…新たな証言を映画のカメラが捉えた瞬間

家族を連れて日本に引き揚げようとしていた父は、家族の元に帰る途中に殺された。長いこと、日本人であることを隠して生き延びてきた。父の身元は長いこと未判明だった。「彼女のお父さんのことを知っている残留2世が、この近所に住んでますよ」現地スタッフの一言に、聞き取り調査に同席していた河合さんの目が光った。「ほんとに!?すぐに連れてきてよ!」息子の運転するバイクの後ろにまたがって現れたのは、近所に住む残留日本人2世のヤジマ・ミチコさんだった。

マサエさんの父について証言するヤジマミチコさん

「マサエさんのお父さん、わたしのお父さん、トモダチ。セジマ・セイイチさん……」貴重な証言が飛び出した。「これは新証拠だね!この映像だって立派な証拠だよ」と喜ぶ河合弁護士。

実は2007年に一度、国籍回復のための就籍(戸籍をつくること)許可を家庭裁判所に申し立てていたマサエさん。2009年に却下され、高裁に抗告するも2010年に棄却されていた。ミチコさんの証言をもとに戦前のフィリピンへの渡航記録などを調べたところ、時期的にぴったりと一致する佐賀県出身の「ソエジマ・テイイチ」さんが見つかった。

そこで、ミチコさんの「証言映像」を新たな証拠として、翌2019年に再申し立てをしたところ、わずか1カ月で許可の審判が下りたのだ。12年のごしの国籍回復の願いを実らせたのは、映像の力だった。

12年越しで日本国籍回復を果たしたソジママサエさん