【コラム】なぜドゥテルテ政権は南シナ海で中国と距離を置き始めたのか

ドゥテルテの方針転換か

2020年7月、ドゥテルテ政権が、国際仲裁裁判所を裁定と国際海洋法条約を遵守するよう中国に要求するようになったのは、中国からの経済的利益の提供が滞る一方、海洋進出のみが強引に進められてきたことへの異議申し立てと理解できる。

中国と合同で行う予定の海底資源調査事業は、2019年12月以来、協議も開催されていない。260億ドルにのぼるインフラ事業への融資も停滞しており、ミンダナオ島の鉄道建設プロジェクトも手付かずだ。任期を残り2年としたドゥテルテにとって、中国からの支援が口約束で終わるのは看過できぬ事態である。他方、中国はコロナ禍のなか、南シナ海への海洋進出を強めてきた。4月には、南シナ海の島々に行政区域を設置して海南省に組み込んだ。

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ドゥテルテ政権にとって、このタイミングでのアメリカによる南シナ海への介入は、基本的に好ましい。2月に宣告した米軍地位協定の破棄を7月に保留にしたのも、そのためだろう。ドゥテルテ自身は、6月のASEAN首脳会議で、中国の名ざしを避けつつ、各国に「国際法に基づき責任を果たすよう」求めた。だが、ロクシンやロレンサナは中国の海洋進出を表立って頻繁に批判するようになっており、そこにはドゥテルテのお墨付きもあろう。

今後、ドゥテルテ政権の方針転換が定着するかは、中国がどれだけの経済的利益を彼の取り巻きや支持基盤にもたらすことができるかにかかっている。ドゥテルテが自らの野望を完遂するにあたって、中国が役に立たないと判断すれば、中国離れがより進むかもしれない。

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