【コラム】フィリピン最大のタブー「中絶」とお化けの関係 フィリピンに住むなら知っておきたい妖怪図鑑<第二弾>

かなり真剣に恐れられていて、妊婦さんのいる家ではマナナンガル避けのために「塩を盛る」「ニンニクをつるす」「ゴムを焼く」などの思いつく限りの効き目のありそうな魔除けが行われています。塩は日本の、ニンニクは西洋の影響がありそうですね。

さて、どうして私がこれこそが人間同士の争いを避けるためのおばけなのだと思っているかというと、そこには「フィリピンでは法律的にも文化的にも中絶が禁止、忌避されている」という事情があります。そう、仮にやむにやまれぬ事情があっても、表立っては中絶はできないのです。でも、それを必要とする場合があるのも事実ですし、実はこっそりと裏では行われているのも事実です。

©Shinya Sawamura

では、やむにやまれぬ事情でこっそりと中絶をしたとき、その夫婦は近所の人になんといえばいいのでしょうか?まさか中絶したとは言えません。そう。そんなときこそ「マナナンガル」の登場なのです。もちろん事情を察した周りの年長者たちは「そうかそうか、マナナンガルにやられたか、それは可哀そうなことだったな」と、敢えて事実究明はしません。

こうやって、「やむにやまれぬ事情」をほじくり返して人間関係が破綻するのを、うまいこと回避しているんじゃないかと私は思っているわけです。ちなみに「あの人は実はマナナンガルらしい」という噂が立つのは、フィリピンの田舎では徹底的な村八分を意味します。