【コラム】悪いのはワタシじゃなくてお化け?フィリピンに住むなら知っておきたい!妖怪図鑑<第一弾>

さて、フィリピンのティグバランですが、どういう伝説があるかというと、夜中に女性を襲ってこどもを作ろうとすると言われています。なんだか妙に具体的ですよね。漁村の男たちは夜中に漁に出ることも多いので、妻を家に置いて出かけることになります。妻の浮気を恐れた男たちが「夜は外に出るなよ!ティグバランが出るからな!」と噂を広めた結果、定着したんじゃないかと私は邪推しています。でも逆に妻の方は密通を夫に疑われた時には「違うの!ティグバランに襲われたのよ!」とか言い訳できるわけです。すごい水掛け論になりそうですねえ。(笑)

私の住んでいる地域ではありませんが、もっと田舎の山の方に住んでいる人たちが、どんな神様や精霊、悪魔を信じているのかを聞き取り調査をするプロジェクトを手伝ったことがあります。そこで出てきた悪魔が「既婚男性に浮気心を起こさせる悪魔」、「既婚女性に浮気心を起こさせる悪魔」、「既婚女性を夫の外出中に淫乱な気持ちにさせる悪魔」など、具体的に夫婦生活を脅かす悪魔たちばかりでして。なるほど、そこを「悪魔のせい」にすることで夫婦関係を良好に保つシステムになっているんだなあ、と感心しました。日本で言うところの「罪を憎んで人を憎まず」に近い感覚ですかね。まあ、「違うの!悪魔のせいなの!」って言われて納得できるかどうかは疑問ですが。

©Shinya Sawamura

とまあ、こんな感じで、まずは「ショコイ」と「ティグバラン」をイラストつきで紹介しつつ、海外の似たような化け物にも触れ、それらがどういう理由で存在すると信じられ、伝説が語り継がれてきたのかを考えました。フィリピンにはこの他にも「カプレ」「マナナンガル」「チャナック」「スィグビン」「ドゥウェンディ」など、ユニークで面白い、そして、考察のしがいのある化け物伝説がたくさんあります。今後も、ちょっとずつ紹介していければと思いますのでお楽しみに!